
ブルーネス (文春文庫)
伊与原 新
文藝春秋 / 2020-04-08
この本について
仕事でも研究でも、前に進みたいのに「自分には力が足りない」「正解が見えない」と立ち止まってしまうことってありますよね。頑張りたい気持ちはあるのに、現実の限界を突きつけられて、どこから手をつけていいか分からなくなるあの感じ。僕もわりと頻繁にそこに落ちます。 『ブルーネス』は、そんなときに「無理に前向きになる必要はないけど、立ちすくんだままでもいられないよな」と静かに背筋を伸ばさせてくれる小説でした。特に響くのは、できることが少ない状況で、それでも手を伸ばした人たちの姿が淡々と描かれているところです。役立たずと呼ばれようが、孤独を抱えていようが、今ある材料で「やれること」を拾い上げていく姿勢が、こちらの思考にも少しずつ移ってきます。 印象的なのは、できない者ができる者の力を借りることを当然の一手として受け入れていく空気や、100パーセントを期待しない関わり方が丁寧に描かれているところです。人に頼ることや、頼られることの温度が少し現実寄りで、妙に救われます。また、海の青さの描写や研究者たちの孤独は、行き詰まりの中でも世界がほんの少し違う色に見える瞬間を思い出させてくれます。 「正解がない中でも、どこかで手を動かしたいと思っている人」に刺さる本です。僕自身、この小説を読んだあと、できることではなく“やれること”を数える癖がつきました。無理に勇ましくならなくていいけれど、止まったままではいられないと感じているときに、ちょうどいい距離で寄り添ってくれる一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの27%が集中しています。
読書の順序
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