
極夜行 (文春文庫)
角幡 唯介
文藝春秋 / 2021-10-06
この本について
最近、自分の感覚が信用できなくなる瞬間ってありませんか。忙しさに追われるほど、何を頼りに進めばいいのか曖昧になって、気づけば「とりあえず目の前の光だけ見て生きている」みたいな状態になってしまう。頭では分かっているのに、身体がついてこない感じもあって、個人的にはこの本の抜粋を見ていると、そこに刺さっている人が多い気がしました。 『極夜行』には、光がないことで未来の感覚が失われ、身体感覚が狂い、基盤が揺らぐ描写がたくさん出てきます。極端な環境の話ではあるんですが、その揺らぎ方が妙に日常の不安と重なる。例えば、自分の感覚が当てにならず北極星に訂正されるシーンは、「思い込みで突っ走っていたのに外部の事実に引っ張られて正気に戻る」あの感覚に近いし、太陽がわずかに戻ってきたときの安堵は、出口が見えた瞬間のあの体温にそっくりです。 この本が効くのは、極限世界の知識が得られるからというより、「混沌の中でどうやって世界を自分の身体に取りこんでいくか」という視点が手に入るからだと思います。計画が崩れ続ける旅を通して、著者が何を手放し、何を掴み直したのかがすごく具体的に描かれていて、自分の生活の中の不安定さにもそのまま持ち込める感触があります。 「最近、自分の立っている場所が定まらない」と感じる人には、特にしっくりくると思います。極夜の闇は極端だけれど、その中で揺れ続ける著者の心はとても人間的で、読み終えるころには、少しだけ光の方向が掴めるはずです。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの18%が集中しています。
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