
Black Box (文春文庫)
伊藤 詩織
Granada Learning / 2005-05-28
この本について
日常を送っているはずなのに、どこかで「自分が知らない領域がまだあるんじゃないか」と落ち着かないことがあります。特に、性暴力のように想像しづらいテーマになると、何となくわかったつもりで距離を置いてしまう。でも、いざ身近な誰かが苦しんでいたら、自分はどう動けるのか…そのあたりにモヤモヤを抱えている人は少なくないと思います。 『Black Box』は、過去の出来事そのものを dramatize するための本ではありません。著者自身が書いているように、「どう起こらないようにするか」「起こってしまった時に何が必要か」という未来の話をするために、あえて過去を開示している。その姿勢がまず、読む側の姿勢まで変えてきます。被害に遭うとはどういうことか、頭では知っていても実感できていなかった部分が、具体的な描写を通してようやく輪郭を持つ。自分の中の想像力の不足に気づかされる瞬間が何度もあります。 もう一つ大きいのは、「被害に遭った後のプロセス」に光が当たっているところです。病院での数分のやり取りが、その後を左右してしまうかもしれない現実。警察に相談すること自体がどれほどハードルが高いか。そして多くが顔見知りによる被害だという事実。読んでいると、問題の所在が“加害者 vs 被害者”という単純な構図ではなく、社会の側の受け止め方や制度の隙間にもあることが、ゆっくり立ち上がってきます。 誰かを守りたいのに、どう関わればいいのかわからない人に刺さる本です。強いメッセージを浴びるというより、理解する力を少しずつ広げてくれる。その変化が自分ごととして残る一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの78%が集中しています。
読書の順序
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