
今を生きる思想 ショーペンハウアー 欲望にまみれた世界を生き抜く (講談社現代新書100)
梅田孝太 and アルトゥール・ショーペンハウアー
講談社 / 2022-09-15
この本について
仕事でも生活でも、うまくいっているはずなのに、どこか落ち着かないときがあります。満たされたと思った翌日に急に空虚になったり、誰かの評価に振り回されてしまったり。欲しいものを手に入れれば楽になれると思い込んでいるのに、実際はむしろ疲れていく。このあたりのモヤモヤは、けっこう共通している気がします。 この本が効いてくるのは、「もっと満たされたい」という前提そのものをいったん脇に置かせてくれるところです。欲望が悪だと言うわけでもなく、むしろ生きるためには必要な力だと認めたうえで、それに振り回され続ける構造を静かに見せてくれる。欲望を満たし続ける道ではなく、「どうすれば苦しみを増やさずに済むか」という視点に切り替えると、日常の選択が少し変わります。たとえば、人からどう見られるかより、自分の内側にある楽しみの種をちゃんと育てることのほうが大事なんだと腑に落ちてくる。外からの刺激に依存しなくても、じわっと満たされる感覚がある、というあの方向です。 さらに、芸術に没入しているときだけ意志の暴走から離れられる、という話も意外と実践的です。気持ちを切り替えるとかリフレッシュというレベルではなく、「いったん世界への執着から離れる時間」と考えると、音楽や本に向かう姿勢が少し変わります。 欲望に振り回されて疲れてしまった人、努力しているのに心が軽くならない人には、とくに刺さる本だと思います。すぐに前向きになれるような内容ではないけれど、長い目で見ると、生き方の重心をゆっくり移してくれる一冊です。
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