
日本のビールは世界一うまい! ――酒場で語れる麦酒の話 (ちくま新書)
永井隆
筑摩書房 / 20230706
この本について
仕事の合間にふと「なんであの会社はあの判断をしたんだろう」「自分の職場で起きているゴタつきって、結局どこから来てるんだろう」と考えることがよくあります。目の前の業務は回っているのに、組織の動きはいつも複雑で読みにくい。そんな時にビール産業の歴史を読むと、不思議と自分の職場を俯瞰して見られる瞬間がありました。 この本は「日本のビールがうまい理由」を語る一方で、実際には人と組織のリアルがぎっしり詰まっています。たとえば、配達の御用聞きが家庭の暮らしにどう入り込んでいったかという話からは、商品が“習慣”になるまでの距離感が見えてきます。スーパードライが登場した時の「ビールください」から「スーパードライください」への変化は、ブランドが人の行動を変えるとはこういうことか、と素直に腑に落ちます。そして、社内の対立や足の引っ張り合いをどう乗り越えて新商品を成立させるのかというエピソードは、自分の現場にも似た空気があるなと妙にリアルです。 歴史の話なのに、自分の仕事の立ち回りにまでつながるヒントが多い。相手が大物でも基本に忠実に提案する方が効くとか、社内の対立を「適合」で巻き込むとか、教科書には載らない細かい“手触り”が拾えるのがこの本の面白さでした。 昔のビール瓶の形の違いや税制の変遷など、豆知識も多いので重くありません。組織の動きに振り回されている人や、仕事でモヤモヤしがちな人に静かに刺さる本だと思います。
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