
文学のエコロジー
山本貴光
講談社 / 2023-11-24
この本について
文章を読んでいて、「結局、どこまでが作者が書いたことで、どこから先は自分の読みなのか」みたいな境界があいまいなまま進んでしまうことってありませんか。物語の世界に入り込んだつもりでも、どこかで手応えが薄いというか、作品との距離がつかみきれないまま読み終えてしまう感じです。僕もよくそのモヤモヤに引っかかっていました。 『文学のエコロジー』は、まさにその「読んでいるつもりなのに、掴みどころがない」状態に少し輪郭を与えてくれる本でした。抜粋にあるように、作品は文字だけでなく、省略によって成り立っているという視点を置かれると、読みながら自分がどこを補っているのかがゆっくり見えてきます。また、TRPGのように「潜在性をデザインする」という考え方を通すと、作者がどんな条件を仕込んで世界を立ち上げようとしたのか、その構造に気づける瞬間が増えるんですよね。読みが当たりかどうかではなく、世界の成り方そのものを追えるようになる感覚に近いです。 あと個人的に助かったのは、作品をプログラムのように見る視点です。作品を前にしたとき、「なんとなく読む」から一歩抜け出して、条件や仕掛けを探しながら読むようになり、結果として読み返しの密度が上がりました。派手なテクニックではなく、目の前の作品への入り方が少し変わる。本書はそのきっかけをくれるタイプの一冊だと思います。 こんな人に刺さるのは、物語をもっと深く味わいたいけれど、どこから手をつければいいのか迷っている人です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの24%が集中しています。
読書の順序
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