
鬼の筆 戦後最大の脚本家・橋本忍の栄光と挫折 (文春e-book)
春日 太一
累計読者数5
平均ハイライト数 30.4件/人
star総合評価 70/100
menu_book精読型
check_circle推定完走率 42%
この本について
仕事でも創作でも、やればやるほど「自分の中にあるものなんて限られてるな…」と感じる時があります。人の期待を気にしすぎたり、逆に安全牌ばかり選んでしまって手応えが薄くなったり。そういう袋小路みたいな感覚、僕も何度もあります。 橋本忍の軌跡を追うこの本は、いわゆる成功物語ではなくて、「迷いながら、それでも自分の感覚を信じて形にしていく人間」をひたすら真正面から描いています。特に、原作の“血”だけを取り出して他は捨てる姿勢や、役者を想定せずに人物そのものを立ち上げるやり方、そして資本に甘えた瞬間に作品が鈍るという厳しい感覚は、読んでいて刺さる人には深く刺さるはずです。自分が面白いと思える地点までなかなか行けない、という正直な告白も妙にリアルで、逆に救われます。 同時に、砂利道で風に吹かれながら弁当を食べるのが「これほど楽しいことはなかった」と言い切る自由さや、幼い頃に見た“河原乞食”への憧れなど、作品の裏側にある個人の根っこが丁寧に掘り起こされていて、創作や仕事に向かう時の姿勢そのものが揺さぶられます。重厚な作品群の裏に、こんな「個の主張」を貫いた人がいたのかと驚かされました。 形にならない焦りを抱えている人、作るものに少しでも濁りを感じている人に、静かに効いてくる本だと思います。
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