
我が友、スミス (集英社文庫)
石田夏穂
集英社 / 2024-03-19
この本について
仕事でも日常でも、周りとうまく噛み合わなくて「あれ、なんで自分だけ違う空気を吸ってるんだろう」と思う瞬間ってありますよね。笑っておくのが正解なのはわかるけど、どうしても納得できない。理不尽とまでは言わないけれど、説明のつかない違和感だけが積もっていく。私もそこをうまく処理できずに、ずっと持て余してきました。 『我が友、スミス』は、その違和感を“無かったこと”にしない物語でした。著者はボディコンテストという特殊な世界に飛び込みながら、結局そこにも社会の縮図があることに気づいていきます。生まれ持ったカードへのしぶしぶの諦め、人に見られることで引き出される集中力、そして極端に走った先でやっと見える「自分の大したことなさ」。このあたりの描写に共感が集まっているのだと思います。筋トレの話に見えて、実際には“社会と折り合いをつけること”と“それでも自分を選び直すこと”が丁寧に書かれているんですよね。 特に印象的なのは、主人公が「別の生き物になりたかった」と気づく場面です。これは自己改革というより、長年まとわりついていた価値観から一時的に距離を取る感覚に近い。筋肥大や水抜きといった具体的な工程を描きながら、そこで得られる集中や謙虚さが、日常にもじわじわ効いてくる。読みながら、私自身も“自分が普段どれだけ他人の視線で物事を判断していたか”に気づかされました。 なので、この本は「人付き合いが苦手」とか「社会に疲れた」というよりも、もっと静かな場所でモヤモヤを抱えてきた人に届く一冊です。「極端な世界の話なんて自分とは関係ない」と思う方ほど、思わぬところで心に刺さるはずです。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第2章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの17%が集中しています。
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