
存在の耐えられない愛おしさ
伊藤 亜和
KADOKAWA / 2024-06-14
この本について
人の期待に合わせすぎて、自分の本音がどこにあるのか分からなくなることがあります。誰かに褒められても「たまたまです」と返してしまったり、幸せを感じる前に不安のほうが先に立ってしまったり。私自身そういうところがあって、何が正しくて何が間違いなのか、判断できないまま日々をこなしている感覚があります。 『存在の耐えられない愛おしさ』は、そんな「うまく幸福に触れられない人」の感覚を静かに拾い上げてくれる本でした。著者がスーさんと対話しながら、自分の弱さや迷いを正面から扱っていく過程は、派手ではないけれど妙にリアルです。期待に応えようとするくせ、自分を信用できない癖、誰かからの優しさを手触りのあるものとして受け取れない怖さ。そういう部分を無理に直そうとせず、まず「こういう気持ちで生きてきた自分」を丁寧に言語化していく流れが、この本の大事なところだと思います。 とくに刺さったのは、幸福や達成感に鈍い自分を責めるのではなく、「それでも今日ここにいる」という実感を少しずつ取り戻していく姿勢でした。家族の写真から、自分も誰かにとっての証そのものなんだと気づく場面や、不安に覆われた世界の中でも、最後はカーテンコールみたいに笑い合えたらいいという願い。それらは解決策ではないけれど、心の奥で凝っていた部分がふっとゆるむ感じがありました。 「自分の感情の輪郭がつかめないまま生きてきた気がする」という人に刺さる一冊です。自分の弱さに引き返さず、そのまま持っていていいのかもしれないと思わせてくれます。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの47%が集中しています。
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