
メディアミックスの悪魔 井上伸一郎のおたく文化史 (星海社 e-SHINSHO)
井上伸一郎 and CLAMP
この本について
「自分が好きで追いかけてきた文化って、どこから来て、どこへ向かうんだろう」とときどき考え込んでしまうことがあります。過去を知らないまま語るのも違うし、でも“歴史”としてまとめられたものを読むと妙に距離がある。そんなモヤモヤを抱えたまま作品を消費している感覚、僕もずっとありました。 この本が面白いのは、単なる回顧ではなく、当時の空気のズレや価値観の衝突を、個々の現場の決断として描いているところです。例えば「新人類」と「おたく」が実はまったく別の文化だったという話。ストリートの軽さと、虚構の中で正義や愛を受け止めようとした姿勢の違いを知ると、自分が今どこに立っているのかが少し整理されます。あるいは、ライトノベルと一般文芸の境界をどうやってこじ開けたのかという編集側の試行錯誤。後から見ると当たり前に見える潮流にも、具体的な“これはこの形で出すべきだ”という判断が積み上がっていることに気づかされます。 さらに印象的なのは、安彦良和や細田守のキャリアを、単発の企画ではなく長期的な射程で育てようとする視点です。好きなものを守るだけではなく、より大きな場所へ押し出そうとする大人たちの動きは、自分の仕事の向き合い方にも重ねてしまいました。表に見える文化と、裏で積み重なっていた戦略の差分を知ると、今の表現の“見え方”も変わってきます。 自分の好きなものを胸を張って語りたいけど、どこかで迷いがある人に刺さる本だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第9章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの26%が集中しています。
読書の順序
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