
渚にて 人類最後の日 (創元SF文庫)
ネヴィル シュート and 佐藤 龍雄
東京創元社 / 2009-04-30
この本について
最近、日々の予定に追われているのに、心のどこかがふっと空白になる瞬間がありませんか。やるべきことは山ほどあるのに、未来を思い描こうとすると輪郭がぼやけてしまうようなあの感じです。僕自身、そんな間の抜けた時間に不安がひょいと顔を出すことがあって、手を動かしていても心だけ取り残されることがあります。 『渚にて』のあの「錆びていて、きしみ…」という一文に反応した人は、おそらく“日常がゆっくり崩れていく感覚”に敏感なんだと思います。世界が終わるという極端な状況を描いているのに、登場人物たちは意外なほど静かで、壊れゆく現実と折り合いをつけながら暮らしています。その姿が、先の見えない時代に自分の生活を続けていく感覚と少し重なるんですよね。 この本が効いてくるのは、まず「どうにもならない状況でも、人は意外と日常を手放せない」という視点が得られるところです。気持ちが追いつかない日でも、家事をしたり、コーヒーを淹れたり、壊れかけた道具をとりあえず引っぱり出して使う。そういう“雑な生活の続け方”に、変に救われます。さらに、終わりが確定している世界で人がどんな選択をするのかを見ると、自分の優先順位が静かに整理されていく感覚があります。大事なことって、派手な決断よりも、毎日の小さな行動に滲むんだなと思わされます。 物語の劇的さより、人の暮らしの匂いに惹かれる人に刺さる本です。未来への不安を一気に解消してくれるわけではないけれど、立ち止まって深呼吸する余裕くらいは取り戻させてくれます。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第3章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの18%が集中しています。
読書の順序
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