
鹿男あをによし (幻冬舎文庫)
万城目 学
幻冬舎コミックス / 2008-11-24
この本について
仕事でも日常でも、視界が近すぎて何が大事なのかよく分からなくなることがあります。人間関係に気を取られたり、自分の気持ちが顔に出てしまって自己嫌悪したり、焦っているときほど“ゆとり”みたいなものがすぐ蒸発してしまうんですよね。そんなときに、ふと距離感を取り戻させてくれたのが「鹿男あをによし」でした。 この物語は奈良の日常の風景が淡々と描かれているのに、なぜか読んでいる側の呼吸がゆっくりになる瞬間があります。たとえば、平城宮跡や朱雀門を歩くシーンの“ただの原っぱなのに、ちゃんと保存されている”という視点。今の自分には何もないようでも、時間をかけて残してきたものが確かにあるんだよな、と気づかされます。また、“適度な距離が大事”という会話は、人との関わり方に疲れているときほど沁みます。近すぎても見えなくなるし、離れすぎても届かない。あの微妙な距離の調整がうまくできなくて悩んでいる人には、特に響くと思います。 そして読者の方が多く保存していたのが、「人間は文字に残しておかないと、どんなこともいつかは忘れてしまうんです」という一連の言葉でした。大げさな教訓ではなく、奈良の歴史の中でさらっと語られるこの一文が、自分の毎日にもスッと重なるんですよね。忙しさの中で見逃してきた感情や景色を、少しだけ拾い直してみようかなと思わせてくれる。 大きな変化を求めていないけれど、今の“行き詰まり感”に静かに風を通したい人に向いている一冊です。読んだあと、自分の生活の中にもゆっくり動いている時間があることに気づけるかもしれません。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第5章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの44%が集中しています。
読書の順序
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