
毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記
北原 みのり
株式会社朝日新聞出版 / 201310
この本について
人を信じたい気持ちと、どこかで「人ってここまで踏み込むのか」という怖さ。その境目みたいなところで揺れる瞬間って、誰でもありますよね。相手の熱量や執着を前にしたとき、自分の感覚が合っているのか分からなくなるあの感じ。そんなモヤモヤの正体を、言葉にできずに抱えたまま日々を過ごしている人は多いと思います。 『毒婦。』を読むと、その曖昧な感覚が少しだけ輪郭を持ちます。木嶋佳苗という一人の女性の「声」や「温度」が、裁判の場面を通して生々しく記録されていて、彼女のやり方が“特別だから怖い”というより、人の弱さや欲望に丁寧に寄り添っていくと関係がどこまで歪むのか、そんな構造が静かに見えてくるんです。例えば、相手に考える隙を与えないほどのメールの連投や、「内面は磨いてきました」と柔らかく入り込みながら距離を詰める手つき。そこには魔法のようなテクニックはなく、ただ“人が孤独なときに何を欲しがるか”をよく知っているだけに見えます。 そして、メディアが彼女の容姿や被害者の男性を消費していく描写も、この事件が単なる「奇妙な犯罪」ではなく、私たちが普段から無意識に抱く価値観や偏見と地続きなんだと気づかせてくれます。恋愛や信頼の名のもとに、どこまで自分を差し出してしまうのか。そのギリギリの温度を知っておきたい人に向いている本です。 「人間関係の境界線が曖昧になる瞬間に不安を覚える人」に、静かに刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第2章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの46%が集中しています。
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