
徳川家康(1) 出生乱離の巻 (山岡荘八歴史文庫)
山岡荘八
河出書房新社 / 2022-10-26
この本について
人間関係でどう振る舞えばいいのか分からない時ってありますよね。相手の意図も、自分の本心もつかみきれなくて、どちらに動いても後悔しそうなあの感じ。歴史物だと戦や権力が中心に見えるけれど、山岡荘八の『徳川家康(1)』を読むと、当時の人たちも同じように迷い、揺れ、誰かの心を測りかねていたことがじわっと伝わってきます。 この巻で印象的なのは、争いの裏にある「怖れ」を丁寧に描いているところです。たとえば男性が女性を粗末に扱う理由のひとつが、奪われる苦しみを先回りして避けたいだけかもしれない、という視点。決して美談ではないけれど、人の行動の陰にある弱さまで覗くと、単純な善悪では片づけられない重さが見えてきます。また、相手の心の“悪鬼”に自分が引きずられないようにする、という教えは、そのまま現代の職場や家族関係にも置き換えられて、妙に胸に残りました。相手が荒れていても、こちらまで同じ温度に染まる必要はない、という距離感の話でもあります。 さらに、小国の家中が三派に割れていく様子や、老木と若木にたとえた勢力の移り変わりなど、組織の内部で起きるひずみが具体的に描かれていて、仕事で板挟みになりがちな身としては思わずうなずく場面が多いです。迷いながらも、少しでも穏やかな方向を探そうとする人々の姿が、歴史物というより身近なドラマに感じられました。 人の弱さや揺れをそのまま見つめたい人に刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第4章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの43%が集中しています。
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