
薬指の標本(新潮文庫)
小川洋子
新潮社 / 1998-01-01
累計読者数3
平均ハイライト数 1.3件/人
推定読了時間 約2時間2分
star総合評価 46/100
boltライト読書型
check_circle推定完走率 90%
この本について
他人と接していると、「この人には悪気がないんだろうな」と頭で理解しつつも、なぜかずっと刺さったままの違和感ってありませんか。相手のペースに巻き込まれたり、言葉と心が一致していない気配を察してしまったりして、こちらだけが疲れてしまうあの感じです。自分が神経質なのか、ただ運が悪いだけなのか、判断できなくなるときがあります。 小川洋子さんの『薬指の標本』を読むと、その曖昧なモヤモヤに少しだけ輪郭がつきました。たとえば、圧倒的な平凡さに覆われた人との距離感や、「ごめんなさい」と言いながら何も思っていない人の空気。そういう“説明がつきにくい他者”に出会ったとき、自分の感じ方が間違っていたわけではなかったんだと、静かに確かめられます。また、痛みへの対処として水泳を勧める場面のように、体と心の変化を淡々と描く筆致が、こちらの感情まで整えてくれる瞬間があります。 物語として劇的な救いがあるわけではないけれど、日常の中で言葉にしづらい不快さや不安を抱えたまま生きている人には、そっと寄り添ってくれる一冊だと思います。こんな人に刺さるはずです。人間関係の“説明できない違和感”をそのまま抱えて歩いている人。
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出版社による紹介
楽譜に書かれた音、愛鳥の骨、火傷の傷跡……。人々が思い出の品々を持ち込む〔標本室〕で働いているわたしは、ある日標本技術士に素敵な靴をプレゼントされた。「毎日その靴をはいてほしい。とにかくずっとだ。いいね」靴はあまりにも足にぴったりで、そしてわたしは……。奇妙な、そしてあまりにもひそやかな、ふたりの愛。恋愛の痛みと恍惚を透明感漂う文章で描いた珠玉の二篇。表題作ほか「六角形の小部屋」収録。
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