
侍女の物語
マーガレット アトウッド and 斎藤 英治
この本について
日々やることに追われていると、「選択肢があるはずなのに、どれも自分の選択じゃない気がする」ときがあります。誰かに決められた役割の中で生きている感じがして、でもそれを言葉にできないまま流されてしまう。そんなときに『侍女の物語』を読むと、極端な世界を描いているはずなのに、妙に自分の感情の輪郭がはっきりしてくる瞬間があります。 この物語が効いてくるのは、まず「自由とは何か」を問い直さざるを得なくなるところです。やりたいことをする自由と、されたくないことをされない自由。作中で語られるこの対比は、現実の私たちの生活にもそのまま重なります。選択肢の多さに疲れているときほど、この二つの違いを丁寧に考えたくなる。さらに、支配される側にいるはずの登場人物が、自分でも気づかない形で力を持ってしまう描写が多く、そこが読者の保存している部分にも表れています。権力のあり方って「上か下か」だけじゃない、と静かに教えられる感じがします。 もうひとつは、「語ること」の意味です。自分の体験を物語として語ることで、ほんのわずかにでも状況をコントロールしようとする姿が、思いのほか現実的で、胸に残る。私たちも、どうにもならない状況のなかで、せめて言葉だけは手放したくないときがありますよね。 刺さるのは、誰かの価値観に押し流されそうになりながらも、自分の感覚だけは失いたくない人だと思います。極端な設定の小説ですが、自分の日常を別の角度から見直すきっかけになる一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの41%が集中しています。
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