
ぼくは勉強ができない (文春文庫)
山田詠美
文藝春秋 / 2015-05-10
この本について
人からどう見られているかばかり気にして、自分の基準がどこにあるのか分からなくなる時ってありますよね。正しさとか、普通とか、周りの決めた枠に合わせようとすると、だんだん自分の輪郭がぼやけてくる感じがする。僕もよくあります。そんな時に『ぼくは勉強ができない』を読むと、肩の力が抜けるというか、「ああ、自分で考えていいんだよな」と思い出させられるんです。 この本の主人公・時田は、不純とか純粋とか、幸せとか不幸とか、世間が勝手に貼りつけるラベルに真正面から疑問を投げます。歩くことを意識すると歩けなくなるように、考えすぎることで本質を見失う瞬間にも触れていて、ああ確かにと何度もうなずかされました。そして、無駄とか不健全と言われがちな感情や衝動を、切り捨てるんじゃなくて、自分の中の一部として扱っていいんだよ、と静かに示してくれる。そこに救われる人は多いと思います。 特に刺さるのは、外側からの評価より、自分の基準をゆっくり育てていく姿勢です。すべてに丸をつけて、あとから自分で選び直すという考え方は、完璧に生きようとして息苦しくなる時の拠り所になるはず。世間の論理にそのまま従うのではなく、そこに隙間があることを認めて、自分で判断していく。その当たり前のようで難しい作業を、時田は等身大のまま続けていきます。 「人からの物差しに振り回されがちな人」には特にしっくり来るかもしれません。僕自身そういう時期に読んで、妙に落ち着いたのを覚えています。背中を押すというより、となりで「それでいいよ」とつぶやいてくれる本です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第2章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの13%が集中しています。
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