
だれのための仕事 労働vs余暇を超えて (講談社学術文庫)
鷲田清一
講談社 / 2011-12-12
この本について
仕事って、いつのまにか「未来のために今を削るもの」みたいに感じてしまう時があります。働いている間は先のことばかり考えて、休みの日もどこか効率を気にしてしまう。じゃあ老後は楽になるかというと、今度は過去の実績に寄りかかるしかない感じがして、どちらにも現在の実感がない。このあたりにモヤモヤしている人、多いんじゃないでしょうか。 『だれのための仕事』は、このモヤモヤに対して説教するでもなく、「そもそも、なぜ僕らはこんな働き方を当たり前と思っているのか」を静かにほぐしてくれます。たとえば、労働と余暇を完全に分けてしまうことが、どちらも空っぽになってしまう理由。子どもの頃から受験が「仕事」化し、大学生活が「余生」みたいに扱われる社会の構造。さらには、現在を生きる感覚を奪ってしまう“前のめりの生き方”がどこから来たのか。どれも身に覚えのある話なのに、言葉にしてもらうとけっこうドキッとします。 この本が支えになるのは、「今の働き方に完全に納得しているわけじゃないけど、かといって全部投げ出したいわけでもない」という人です。未来のために今を犠牲にするのではなく、他者との関わりの中で変わっていくような仕事のあり方は、本当に自分にもありうるのか。読みながら、そんな視点の変化が少しずつ積み上がっていきます。 刺さる人は限られるかもしれませんが、「働く意味を、決めつけじゃなく自分の言葉で考えたい」という気持ちがあるなら、長くじわじわ効く一冊だと思います。
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