
都市と地方をかきまぜる~「食べる通信」の奇跡~ (光文社新書)
高橋 博之
光文社 / 2016-08
この本について
都会で暮らしていると、食べものも情報も「完成された状態」で届くことが当たり前になっていて、自分が何かに参加している実感が薄れるときがあります。仕事では数字や画面と向き合い続け、気づけば頭だけが先に疲れてしまう。そんな感覚、僕もよくあります。便利に囲まれているのに、なぜか満たされないあの違和感です。 『都市と地方をかきまぜる』は、そのモヤモヤに対して「一度、生産の現場に目を向けてみない?」と静かに誘ってくる本でした。ワカメが丸ごと届いて家族で戸惑う話や、牡蠣の殻と格闘する都会の人たちの姿は、笑えるけれどどこか刺さります。知らない形の食べものに触れたときに湧く驚きや戸惑いこそが、自分が世界とつながっている感覚を取り戻す入り口になる。そんな具体的なシーンがたくさん出てきます。 もう一つ印象に残ったのは、「消費者」という立ち位置から一歩だけ動くと、見える景色が変わるという視点です。街の暮らしは情報であふれ、知ることすら消費になりやすい。でも著者は、関係性に触れることで初めて共感や実感が生まれると語ります。生産者の物語を主役にした「食べる通信」は、その関係の回復を手伝ってくれる仕組みなんだと素直に思いました。 便利だけでは満たされない理由を知りたい人や、日々の仕事に実感を失いがちな人に向いている一冊です。都会と地方、頭と体、消費と参加。その境界を少しだけ混ぜてみると、暮らしの手触りが変わるかもしれません。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第6章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの18%が集中しています。
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