
光秀の定理 (角川文庫)
垣根 涼介
KADOKAWA / 角川書店 / 2013-08-30
この本について
仕事でも人間関係でも、「自分をどう押し出せばいいのか分からない」とか、「責任感が強いほど身動きが取りづらくなる」という悩み、けっこう共通なんじゃないかと思います。僕もそうで、義務感と賢さのどちらを優先すべきか、いつも揺れています。 『光秀の定理』は、まさにその揺らぎの中にいる人の視点を丁寧に拾ってくれる小説でした。光秀は能力に不足がないのに、自分を強く主張するのが苦手で、しかも一族の歴史や立場を背負い込みすぎてしまう。その真面目さが行動の源になる一方、視野を狭め、柔軟さを奪っていく。読みながら、「分かりすぎる…」という場面がいくつもありました。そして彼の周囲にいる人たちが、その不器用さを理解し、時に助け、時に突き放す関係が、この物語の温度を決めています。 特に刺さったのは、行動には情念が必要なのに、情念が強すぎると賢さを失うという葛藤や、得手とすることを通じてしか人は賢くなれないという指摘です。抽象論ではなく、光秀が人に接するときのぎこちなさ、心が折れていく瞬間、逆に芯が浮かび上がる場面まで具体的に描かれていて、自分の癖や限界をそのまま見せつけられる感覚がありました。 「責任感が強いのに、どこか生きづらさを抱えている人」には、特に深く刺さると思います。光秀の生き方を歴史としてではなく、一人の不器用な人の選択の積み重ねとして読むと、自分の立ち位置を少しだけ冷静に見直せる一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第9章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの24%が集中しています。
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