
天才シェフの絶対温度 「HAJIME」米田肇の物語 (幻冬舎文庫)
石川拓治
幻冬舎 / 2017-04-11
この本について
仕事の判断で迷ったり、がんばっているはずなのに前に進んでいる感じがしなかったり。そんなときって、自分の視野がどこに引っかかっているのかすらわからなくなることがあります。僕も同じで、動くべきか考えるべきか、あるいはただ流されているだけなのか、その境が曖昧になる瞬間がよくあります。 『天才シェフの絶対温度』を読んで印象的だったのは、「夢見て行い、考えて祈る」という順番が徹底して描かれていたことでした。夢を見て動いてしまう無鉄砲さではなく、動いたあとにようやく視界が開けてくる感覚。慎重さと勢いのどちらが正しいかではなく、順序を間違えると何も始まらないという、少し耳が痛いけれど妙に腑に落ちる話でした。さらに、厨房での修業の場面では、自分の仕事だけに意識を向けると、むしろ何もできなくなるという現実が描かれていて、これはそのまま職場の人間関係にも置き換えられると思います。自分の役割の外側に意識を伸ばすと、ようやく全体が見えるという感覚です。 もう一つ、個人でがんばっている人ほど響くのが、米田さんが開業当初に経験した「誰も来ない夜でもやることは山ほどある」というくだりでした。結果が出ていないときほど、手を動かし続けられるかどうかが問われる。努力が報われる保証なんてないけれど、手を止めたら本当に何も起きなくなる。その現実を真正面から描いているからこそ、読んだあとに小さく前へ進む力をもらえます。 自分のペースで悩みながら働いている人、特に「自分のやり方はこれでいいのか」と何度も立ち止まってしまうタイプの人には、じわっと効く本だと思います。
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