
民事裁判入門 裁判官は何を見ているのか (講談社現代新書)
瀬木比呂志
講談社 / 2019-07-17
この本について
訴訟に限らず、誰かを説得しようとするときに、「自分では筋が通っているつもりなのに、相手にはまったく伝わらない」という場面ってありますよね。しかも本人同士は分かっているつもりで話していても、第三者だけが置き去りになっている…仕事でもよくある光景だと思います。僕も、主張が広がりすぎたり、前提がズレたまま議論してしまうことがあり、そのたびに後から「どこで話がこじれたんだろう」と考え込んでしまいます。 この本が面白いのは、民事裁判という専門的な世界を通して、「人に伝わる構造とは何か」を徹底的に見せてくれるところです。裁判官が何を見るかを知ると、自分の文章や説明のどこが曖昧で、どこが独りよがりなのかがやたら見えてくる。例えば、主張のテーマをまず明確に区分すること、最初から証拠や重要な論点を隠さず出すこと、相手の主張を簡潔にまとめたうえで、自分のストーリーで説明し直すこと。このあたりは、法廷と関係なくてもそのまま仕事の文章や会議で使える視点でした。 読んでいて特に刺さったのは、「自分が分かっていることを、裁判官に分からせる努力が必要」という指摘です。自分の中で確信があるほど、説明を端折ってしまいがちなのは、裁判でも日常のコミュニケーションでも同じなんだなと感じました。裁判官が“人間として”どこで拒否感を持つのか、どんな文章なら読み進められるのかといった話も、妙に現実的で、逆に信頼できるんですよね。 専門書というより、「論点が散らかりがちな人」「相手の理解を置き去りにしやすい人」に静かに効いてくる本です。裁判に関わらなくても、説明する仕事の人にはかなり刺さると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第5章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの38%が集中しています。
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