
聖なるズー (集英社文庫)
濱野ちひろ
この本について
人と動物の境界って、頭では「はっきりしているはず」と思いながら、実際にはどこか曖昧で、自分でも説明がつかないことがあります。とくに性や愛の話になると、価値観が揺れる感じがあって、整理できないまま蓋をしてしまうことも多いと思います。僕もそうで、この本を読むまでは「説明しにくい違和感」をそのまま放置していました。 『聖なるズー』は、動物性愛というタブーなテーマを扱っているのに、読者を煽ったり、答えを急かしたりしません。ドイツのズーたちに取材した著者が、相手をジャッジせず、しかし距離を保ち続けようともがく姿が印象的で、人と動物のあいだに自分がどんな線を引いてきたのかを、いやでも考えさせられます。たとえば「犬を子ども扱いしていないか」とか、「どこまでを対等と呼べるのか」とか、普段なら見過ごしてしまう視点を突きつけられる感じがあります。 個人的に効いたのは、ズーの人たちが語る“選択”のあり方でした。生まれつきではなく、考え抜いた結果として「自分はこうありたい」と決めている人がいて、それを見ていると、性の話に限らず、私たちが無意識に抱えている前提そのものを疑うきっかけになるんですよね。また、著者自身が動物へのまなざしや人との関係性に揺れながら、「客観的ではいられない」瞬間と向き合う姿も、他人事じゃないと思いました。 境界や価値観の揺らぎを、そのまま抱えている人に刺さる本です。ここで描かれているのは特殊な世界だけれど、自分の中の線引きを見直したいときに、静かに効いてくる一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第7章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの16%が集中しています。
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