
吹上奇譚 第三話 ざしきわらし (幻冬舎文庫)
吉本ばなな
幻冬舎 / 2023-01-13
この本について
人と話していても、どこか「ちゃんと関係を作らなきゃ」と力が入りすぎたり、逆に何を話せばいいのかわからなくなることってありませんか。家族でも友人でも、名前のついた関係のほうを意識しすぎて、肝心の「自分がここにいてもいい感じの会話」ができていない気がして、ふと虚しくなるようなときがあります。 『吹上奇譚 第三話 ざしきわらし』は、そういうモヤモヤを、説明ではなく“風景”としてそっと差し出してくれる本でした。たとえば、相手にとっては何気ない行動が、こちらの人生を支えるほどの救いになっていることがあるという視点。これは、誰かに特別なことをする話ではなく、普段の自分の延長線上にある関わり方を思い出させてくれます。また、聞いてもらうことで初めて自分が見えてくるという描写もあって、会話って「理解し合う」というより「生きている感触を確認する」ものなんだなと、肩の力が抜けました。 さらに、なにかを“面倒見る”ことが人間の自然な広がり方なのかもしれない、という一節も印象的でした。子どもや家族という枠に限らず、魚でも植物でも、店でも近所の子でも、気づけば自分の世界を少し温めてくれる存在がいる。そう思うと、自分の生活にも静かに息づいているものがあるように感じられます。 関係に名前をつける前の「なんとなく安心して話せる感覚」を取り戻したい人に刺さる本だと思います。忙しい日常の端で、自分と誰かのあいだにある微細なあたたかさを確かめたいときに、そっと寄り添ってくれます。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの33%が集中しています。
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