
TUGUMI (中公文庫)
吉本ばなな
この本について
人との距離感に戸惑ったり、自分の気持ちだけが少し遅れてついてくるような瞬間ってありませんか。楽しいはずの時間なのに、どこかで「自分は場に溶けきれていないかもしれない」とふとよぎる。そういう感覚って、誰にもあまり言えないまま積もっていくものだと思います。 『TUGUMI』の抜粋を読むと、読者が惹かれているのは大きなドラマよりも、静かな景色のなかで自分の心がゆっくり輪郭を取り戻していくような瞬間なんですよね。乾いた真昼の旅館街でアイスを食べる場面や、港を見下ろしたときに「結局人は少しよそ者だ」と気づく感覚。ああいうさりげない描写が、自分の過去のどこかをそっと押してきます。そして、人間関係の“出した分が返ってこないと人は去る”という現実味のある台詞や、恋愛に対してどこか遠巻きだった心が突然動きだすあの感じに、思い当たる人も多いんじゃないかと思います。 この作品が効くのは、無理に前向きにしようとするんじゃなくて、「自分は今こう感じているんだな」と落ち着いて見つめ直す余白をくれるところです。誰かとの関係に疲れたとき、家族との距離がわからなくなったとき、季節の変わり目に胸がざわつくとき。そういう場面で、登場人物たちの風景や言葉が、自分の生活のどこかとゆっくり噛み合っていきます。大げさに救われるというより、気づいたら気持ちの温度が少し整っている、そんな読後感です。 日常の中で「自分の感情の位置」を見失いやすい人に、そっと刺さります。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第3章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの35%が集中しています。
読書の順序
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