
紫式部と藤原道長 (講談社現代新書)
倉本一宏
講談社 / 2023-09-21
この本について
仕事の山に巻き込まれていると、気づけば「人の感情や思惑が入り混じる場で、どう距離を取ればいいんだろう」と迷うことが多いです。相手の言葉の裏に何があるのか分からないと不安になるし、かといって政治的な駆け引きに強くなりたいわけでもない。この本を読んでいて、平安の宮廷でも同じように、人が人に振り回されながら生きていたんだな、と妙に落ち着きました。 紫式部の立場が決して恵まれたものではなく、雑用を免除された分だけ妬まれたり、里下りを許されることで逆に居づらくなったりする描写は、現代の職場にもそのまま重なります。誰かの庇護があると同時に、それが新たな軋轢を生むこともある。読んでいて「ああ、自分だけじゃない」と思えました。また、彼女が清少納言を批判した背景に、彰子サロンの政治状況が影響していたという分析は、言葉にはその人が選べなかった環境が必ず混じるという当たり前のことを思い出させてくれます。 そして、道長との女郎花の歌のやりとりや、帝の誕生をめぐる微妙な空気など、人物同士の距離感が細やかに描かれていて、「権力者」と聞くと遠い存在に思える人たちにも、好き嫌いや意地、沈黙の意味があったことが立ち上がってきます。権力闘争を“理屈で”ではなく“感情の積み重ねで”理解できるのが、この本の良さだと感じました。 人間関係の温度差に疲れている人、歴史を物語ではなく「生活の延長」として読みたい人には、とても向いています。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第7章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの17%が集中しています。
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