
楠木建の頭の中 戦略と経営についての論考 (日本経済新聞出版)
楠木建
日経BP / 2024-11-15
この本について
仕事の方針を決めるとき、「これって本当に自分たちのやるべきことなんだろうか…」と立ち止まる瞬間ってありますよね。周りと比べて”もっと良く”しようと動いているはずなのに、どこかで同じ土俵の上を走らされているような感覚が抜けない。僕もよくそこでもやつきます。 楠木建さんのこの本は、そのモヤモヤに対して「比較じゃなくて、そもそも違う土俵をどう作るのか」という視点を静かに渡してくれます。競争戦略を「優れているかどうか」ではなく、「他と違うかどうか」で捉え直す話は有名ですが、本書ではその背後にある思考の骨格が丁寧に語られていて、読みながら自分の仕事にもそのまま引き直せる感覚があります。特にコンセプトを「顧客価値の核心を一言に凝縮したもの」として定義し直す部分は、目の前の成果物ではなく、商売全体の“空気”を作る仕事に意識が向くきっかけになりました。 もうひとつ刺さったのは、著者自身が「思考代行業」として徹底的に時間をかけて考え続けているという姿勢です。経営者の視点を代わりに深掘りする、というあの語り口が妙にリアルで、こちら側も「自分の仕事で本質的に考えるべきことってなんだっけ」と立ち戻らされます。歴史を手がかりに普遍を見る話もそうですが、抽象ではなく、実務の裏側で効いてくる理屈だけが残っていく感覚があります。 「戦略を言葉で語ると急に薄くなる」と感じてきた人ほど刺さる本だと思います。仕事の判断基準をいったん整えたいとき、静かに助けてくれる一冊でした。
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