
ボッコちゃん(新潮文庫)
星 新一
角川書店 / 200601
この本について
仕事をしていると、ときどき「自分は何を信じて動けばいいんだろう」と立ち止まることがあります。評価も、人間関係も、会社の思惑も、表の顔と裏の顔が入り混じっていて、気づけば振り回されてばかり。まじめにやっているつもりなのに、どこか報われない感じが残ることもあります。 今回の抜粋を見ていると、読者が刺さっているのは “人の思惑に巻きこまれる瞬間” や “言葉の裏に潜む温度差” のように感じました。星新一の短編には、善意と悪意の境界がゆるく揺れていて、登場人物たちは普通の生活の顔をしたまま、気づけば想像もしなかった場所に連れて行かれます。そのズレが、自分の毎日のモヤモヤをそのまま拡大したようで、妙にリアルなんですよね。 この作品集が効いてくるのは、まず「人は案外、理由もなく転がされる」という冷静な視点をくれるところ。腹が立つというより、力が抜けて、距離を置いて物事を見られるようになります。それから「まじめさが報われるかどうかは別問題」という感覚も残りますが、それは自分の価値が揺らぐというより、世界の仕組みを一歩引いて見られる安心に近いです。そしてもうひとつ、言葉が便利すぎるせいで、かえって人と分かりあえなくなる場面を描く話もあって、日常のコミュニケーションを考える小さなきっかけになります。 どちらかというと「正しさに疲れたときに、少し距離を取りたい人」に刺さる本です。短い話ばかりですが、読み終えると、世界のほうが少し不思議で、人間のほうが少し滑稽で、自分の悩みはそこまで抱え込むほどでもないかもしれない、そんな気持ちになります。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第5章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの37%が集中しています。
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