
この本について
人間関係でも仕事でも、「相手の気持ちなんて結局わからないよな」と思いながら、それでも理解しようとして疲れてしまう時があります。近づきたいのに踏み込めない感じや、自分の感情の正体がつかめない瞬間って、誰にでもあると思うんです。 『エディプスの恋人』を読んでいて感じたのは、その“わからなさ”をごまかさずに描き切っているところでした。七瀬が恋を呪うほどの重さや、愛する心が言葉よりも前に相手へ直接伝わってしまうあの描写は、「理解できないことを理解しようとする疲労」を逆に軽くしてくれます。さらに、宇宙意志としての珠子の圧倒的な存在感も、突飛な設定に見えて、実は「自分より大きなものを前にした時の人間の立ち位置」を静かに教えてくれます。理由なんて追いかけても届かないけれど、それでも関わり続けてしまう感情のリアルさが、生々しくて妙に腑に落ちました。 あと、七瀬が仲間たちを思い出す場面は、喪失を抱えたまま前に進むことの孤独をそのまま差し出してきます。強くないまま生きている人間の姿が描かれていて、自分の弱さも含めて「ああ、これでいいのかもしれない」と思わせてくれました。 人間の感情を“整えた形”で読みたくない人、混沌のまま掴んでみたい人に刺さる一冊です。
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