
家族八景(新潮文庫) (七瀬シリーズ)
筒井康隆
新潮社 / 1975-03-03
この本について
家庭や職場で、人の気持ちが読めないわけじゃないのに、妙に距離をとってしまう時ってありませんか。相手の本音が透けて見えるほど、むしろ踏み込み方が分からなくなる…みたいなやつです。年齢を重ねるほど、人間関係の「表面」と「裏側」の差に疲れてしまう瞬間も増えていく気がします。 『家族八景』を読んで刺さるのは、まさにその「見えてしまう側」のしんどさが遠慮なく描かれているところだと思います。誰もが少しは抱えている軽蔑や見栄や逃避が、七瀬の視点だと容赦なく浮かび上がる。その残酷さにゾッとする一方で、自分も例外じゃないんだよな…と妙に落ち着かされるところがあるんです。たとえば、中年夫婦が「この相手しかいない」と自分に言い聞かせる心の動きとか、無視されることに慣れた妻の微妙なあきらめとか、普段なら蓋をして流してしまう感情が、静かに可視化されていく。読みながら、自分の中にも似たものが眠っているのを認めざるを得なくなります。 とはいえ、この本は人間の暗さだけを突きつけてくるわけでもありません。老い方や夫婦の距離感についての描写にもどこか救いがあって、「中年になることは、青春の狂気から解放されること」という一文に、年齢を受け入れるヒントみたいなものがにじんでいます。自分の弱さも他人の醜さも、ただの現象として眺める視点。それを持てると、少しだけ呼吸がしやすくなる。 身近な人間関係に、うまく言葉にできない違和感を抱えている人に刺さる一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの27%が集中しています。
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