
NHK「100分de名著」ブックス 般若心経
佐々木 閑
NHK出版 / 2014-01-24
この本について
最近、人との距離感がうまくつかめなかったり、「正しさ」や「善い行い」に縛られてしんどくなることが増えていませんか。自分のためにやっているつもりなのに、いつのまにか他人の評価や、自分への期待に振り回されてしまう。僕自身もそこから抜け出せず、妙な息苦しさを抱えていました。 この本を読んで驚いたのは、般若心経が“何かを信じれば救われる”という話ではまったくなかったことです。むしろ、僕らが当然だと思い込んでいる前提――善い行いをすれば善い結果が返るとか、自分と他者は理解し合えるはずだとか――そういう日常の思考そのものが苦しみの種になっている、とかなり冷静に見せてくれるところです。善い行いですら強い自己意識があれば業になる、という説明は特に刺さりました。自分をよく見せようとするほど縛られる、あの感覚の正体が言語化されているようでした。 もう一つ、救われたのは「違うものは違う、とそのまま受け止める」という姿勢です。無理に同じになろうとしたり、相手を自分の世界に引き寄せようとしたりするから関係が歪む。これは人間関係だけでなく、自分の感情にも当てはまる気がします。無理に前向きになろうとせず、ただ事実として見るだけで少し楽になる。般若心経を“呪文”として扱う理由も、そうした思考のクセをほどくための装置なんだと腑に落ちました。 自分の中のモヤモヤを一度フラットに見直したい人、あるいは「善くあろう」とすることで疲れてしまった人には静かに効いてくる本だと思います。
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