
坂の上の雲(三) (文春文庫)
司馬遼太郎
ディスカヴァー・トゥエンティワン / 2009-11-01
この本について
仕事で大きな判断を迫られたとき、慎重すぎる自分と、踏み込む勇気のなさのあいだで揺れることがよくあります。間違えたくない気持ちはあるのに、情報は足りないし、周りの空気も読まなきゃいけない。そんな状況で、自分はどこまで覚悟を決めて動けるのか。最近そのあたりでもやもやしている人に、坂の上の雲(三)はけっこう効きます。 この巻に出てくる登場人物たちは、後世から見れば巨大な時代の渦の中にいるのに、当時の彼らは私たちと同じように迷っていて、腹をくくる場面では手が震えている。たとえば、西郷や権兵衛が「違憲でもやる」と腹を決めて艦を買うくだりは、正しさよりも「国が潰れる前に何を優先するか」を選んだだけで、英雄として振る舞っているわけではない。あるいは、参謀たちが「原則すら疑ってみる」姿勢を崩さず、それでも最終的には自分の戦術を持とうとする感じも、現場で迷いながら進む私たちにかなり近い温度です。 さらに、本書は「勇猛さ」や「判断の早さ」を持ち上げるわけではなく、その裏にある軽率さや、組織を壊すリスクにもきちんと触れている。慎重さと決断のバランスをどこで取るか、他人の期待よりも自分の責任をどこに置くか、その葛藤がとても人間らしく描かれています。結局のところ、強い人が勝ったのではなく、迷いながらも自分の役割を果たした人が時代を動かした、そんな読後感が残りました。 腹をくくるべきタイミングを見失いがちな人に、とくに刺さる一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第2章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの20%が集中しています。
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