
怖い絵 死と乙女篇 (角川文庫)
中野 京子
KADOKAWA / 2012-08-25
この本について
ときどき、自分でも理由が分からないのに心をざわつかせる絵や出来事に出会うことがあります。善悪とか教養とか関係なく、もっと奥のほうを刺激されるような感覚です。でもその理由をうまく言語化できなくて、モヤモヤだけが残る。そんなときに頼れる言葉を持っているのが、この『怖い絵 死と乙女篇』でした。 この本は、絵の背景にある神話や宗教、時代ごとの価値観をていねいに拾いながら、「なぜこの絵は私たちを不安にさせるのか」「なぜ美と残酷さは隣り合うのか」という問いに具体的に踏み込んでいきます。たとえば、理想化されたヌードが実はリアルとは正反対の“願望の産物”だったり、ヴィーナスという存在そのものが誕生の時点から暴力と神話的装置に満ちていたり、あるいは階級や性別の制約が絵の中の人物の表情にまで影を落としていたり。自分の「なんとなく怖い」の正体が少しずつほぐれていく感覚があります。 読んでいると、絵を見るときの視点が静かに変わります。単なる美術鑑賞ではなく、「この時代の人は何を恐れ、何を望んでいたんだろう」と自然に考えるようになる。そこまで考えてみると、自分の中にある恐れや思い込みも、時代と文化の影響を強く受けているんだなと気づきます。だからこそ、この本は絵の解説書というより、自分の感情の奥行きを確認する手がかりに近い。 自分の「説明できない感情」にときどき振り回される人に、特にしっくり来る一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの59%が集中しています。
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