
血盟団事件 (文春文庫)
中島岳志
文藝春秋 / 2016-05-10
この本について
日常で、人の強い言い切りに流されそうになったり、自分の不安につけ込まれている気がしてモヤッとすることってありませんか。自分の考えが弱いのか、それとも相手が強すぎるのか。その境目がうまく掴めないまま、なんとなく疲れていく感じです。 『血盟団事件』を読んでいて感じたのは、あの時代の青年たちも同じように不安と孤独の中で「分かりやすく断言してくる大人」に惹きつけられていったということです。井上一九が若者の心を掌握していく過程は、歴史の話というより、私たちの日常の縮図に近いものがあります。就職や居場所への不安、社会からの排除感、誰にも相手にされない本質的な問い。そういうすき間に言葉の強い人が入り込んで、主従関係のようなものができていく。この構造が丁寧に描かれていて、自分も気づかないうちに似た流れに乗っていないか、ふと立ち止まれました。 同時に、彼らが過激化していく背景には、生活のしんどさや家族とのすれ違い、満たされない思いが積み重なっていたこともわかります。だからこそ、この本は「どうすれば過ちを防げたのか」を声高に説くのではなく、人が追い詰められた時にどんな道を選びやすいのかを、静かに教えてくれます。歴史の事件なのに、誰か一人を善悪で裁ききれない読後感があります。 過去の極端な出来事に、自分の日常の延長線を感じたい人に刺さると思います。私も読みながら、他人事ではいられませんでした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの75%が集中しています。
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