
きみは赤ちゃん (文春文庫)
川上未映子
文藝春秋 / 2017-05-10
この本について
妊娠・出産まわりの話って、人によって体験も温度も違いすぎて、身近な相手でも「わかってほしいけど、わからないのが普通」というところでつまずきがちですよね。つわりの重さや、産後の不安、パートナーとの温度差。言葉にしづらいのに、日々は待ってくれない。そのどうしようもない感じを抱えたまま過ごしている人は多いと思います。 『きみは赤ちゃん』は、その「言葉にしづらい部分」を、笑ってしまうほど具体的に、そして正直に書いてくれています。排水口のビジュアルで涙目になるほどのつわりの話も、産後のホルモンで理由なく泣き続ける自分も、パートナーへの苛立ちや「わかってほしいのに、そもそも他人なんだよな」という距離感も、全部そのまま。読んでいると、自分のしんどさが「特別な失敗」じゃなくて、「人間の体に起きている当たり前の現象なんだ」と、少し冷静に戻れる瞬間があります。 もうひとつ、この本が助けてくれるのは「言葉をもつと気持ちがほどける」という実感です。自分がいま何に疲れていて、どこがつらくて、なにを期待してしまっているのか。川上さんの描写を追っていると、うまく言えなかった自分の感情の形が見えてきます。パートナーとの会話でも、自分を責めすぎる癖との向き合い方でも、その小さな言語化がじわっと効いてくる。 妊娠・出産を経験している人だけじゃなく、「自分のしんどさをうまく説明できずにいる人」にほど刺さる本です。ここまで正直に書かれた記録って、あまりないと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの17%が集中しています。
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