
感染症の世界史 (角川ソフィア文庫)
石 弘之
KADOKAWA / 2018-01-25
この本について
ときどき、ニュースで感染症の話題が出るたびに「結局、何をどう怖がればいいのか」が自分でもよく分からなくなることがあります。備えるべきなのか、気にしすぎなのか、その線引きが難しいまま日々が流れていく感じです。 『感染症の世界史』を読んでみて思ったのは、恐怖をあおる類の本ではなく、「人間と感染症の関係って、実はこんなふうに続いてきたんだよ」という俯瞰の視点を静かに置いてくれる本だということでした。たとえば、昔の日本で結核が若者の死因の大半だった話や、交通網の発達がウイルスの移動速度を一気に変えた話は、今の社会の脆さとも直線でつながっています。さらに、偏見や排除の歴史が何度も繰り返されてきた現実に触れると、「正しく怖がる」って結局こういう背景を知るところからしか始まらないんだな、と腹に落ちました。 そしてもう一つ大きかったのは、感染症が自然環境の変化と強く結びついていることが丁寧に描かれている点です。森林破壊や都市化で新しい病が生まれる構造を知ると、単なる医学の話ではなく、自分たちの暮らし方そのものの話なんだと分かってきます。だからといって解決策を押しつけるような本ではなく、あくまで「世界をこう見ておくと判断しやすくなるよ」という静かな距離感です。 歴史の積み重ねを知ることで、不安を煽られすぎず、かといって油断もしない、その中間を探したい人に刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第2章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの27%が集中しています。
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