
歴史とは何か (岩波新書)
E・H・カー and 清水 幾太郎
PHP研究所 / 2014-10-21
この本について
仕事でも私生活でも、「事実は事実としてそこにあるはずだ」と思い込んで議論がかみ合わないこと、けっこうありませんか。自分でも気づかないうちに、見たいものだけ切り取ってしまっている感じがして、なんとなく落ち着かない。そんなモヤモヤに向き合うきっかけとして読んだのが『歴史とは何か』でした。 この本がおもしろいのは、「歴史家は過去の一員ではなく現在の一員だ」という視点を徹底しているところです。私たちが知っている“歴史上の事実”は、その時代の人が何を残し、何を捨てたかという選択の結果でしかないし、現代の私たち自身も、自分の立場や経験を通して読み取っているにすぎません。これに気づくと、日常の議論でも「この人は何を前提に事実を選んでいるのか」という問いが自然に浮かんできます。相手の言葉の裏側にある世界の見え方を想像しない限り、理解には届かないという感覚が、急にリアルになります。 もうひとつ効いたのは、「歴史とは、過去と現在の対話だ」という考え方です。これは決して格好つけた比喩ではなくて、私たちが過去を扱うときの態度そのもの。事実を積み上げれば“正解”が出るわけではなく、選択と解釈が常に往復しながら形になっていく。仕事で情報が増えれば増えるほど迷う自分には、この“往復運動”の感覚がかなり救いになりました。 刺さるのは、「事実の扱い方にずっと不安がある人」だと思います。歴史の本というより、ものを見る姿勢を整える手すりのような一冊でした。
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