
あの日、君は何をした (小学館文庫)
まさきとしか
小学館 / 2020-07-12
この本について
人の言動の理由が、どうにもつかめないまま放置してしまうことってありますよね。普通って何だろうとか、あの人はなんであんな行動をしたんだろうとか。考えても答えは出ないのに、心だけがざわつく感じ。私もその手のモヤモヤをよく抱えるのですが、『あの日、君は何をした』は、その「理由の見えなさ」と真正面から向き合う物語でした。 この作品の人物たちは、誰もが何かを隠していたり、言葉を選んでいたり、沈黙していたりします。「普通」という言葉の曖昧さや、捜査の中で少しずつ積み上がっていく違和感が、読んでいるこちらにも響いてくるんです。なにより、動機の抜け落ちた事件や、鍵一本の扱いにこだわる刑事たちの視点が、「理由を知りたい」という気持ちそのものを丁寧に描いてくれている。私自身、理由を急かしてしまいがちなところがあるので、登場人物の逡巡に共感しながら読み進めました。 そしてこの本の強さは、ミステリでありながら、ひとつにまとまらない人生の連なりをそのまま肯定しているところです。人の行動や選択は十把一絡げにはできないし、誰かの痛みは他人がきれいに整理できるものでもない。けれど、その複雑さをいったん受け止めたうえで、もう少しだけ他人の理由に目を向けてみようと思わせてくれます。 人の「なぜ」に敏感な人や、説明のつかない出来事に心が引っ張られてしまうタイプの人には、特にしっくり来る一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第6章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの22%が集中しています。
読書の順序
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