
古典文法質問箱 (角川ソフィア文庫)
大野 晋
KADOKAWA
この本について
古典を勉強してきたはずなのに、「なんでこんなこと覚える必要があるんだろう…」と学生時代のモヤモヤがいまだに尾を引くことがあります。仕事でも日常でも言葉を使うのに、その成り立ちとなると一気に霧がかかったようになる感じ、けっこう残っていませんか。 『古典文法質問箱』は、その霧を強引に晴らすというより、「こういう背景があったなら、この文法はこう見えるよね」と視点を少し横にずらしてくれる本でした。例えば、海を「カイ」と読むのは、日本語に h の音がなかったから中国語の hai を最も近い音で写しただけだ、という話。こういう具体的な一例が入るだけで、教科書で見た記号のような文法が、人の生活と感覚の積み重ねのなかにあったことが腑に落ちてきます。また、ク活用とシク活用の違いも、性質と情意という生活に根ざした分類だとわかると、単なる暗記の項目ではなく、「昔の人が何をどう感じていたか」を読むための手がかりに変わります。 読み進めていくと、文法そのものより「昔の人の視線」を追体験している感覚が強くなります。禁止の「ゆめ」や、「御」がなぜオホンと読むのかといった細部の話も、言葉がどれだけ人間くさい理由で形を変えてきたかを示していて、妙に安心します。言葉の仕組みを知ることが、今の自分のものの見方を少し広げてくれる。その実感が静かに積もる本でした。 昔の知識の穴がずっと気になっている人、あるいは「日本語ってどういう言葉なんだろう」と考え始めた人には、とても刺さると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの25%が集中しています。
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