
新釈 走れメロス 他四篇 (祥伝社文庫)
森見登美彦
KADOKAWA / 2015-08-25
この本について
仕事の文章でも、日常の会話でも、「言いたいことはあるのに、言葉が追いつかない」というモヤモヤってありますよね。自分の感情や状況をうまく言語化できず、まごまごしたまま流してしまう。あとで振り返ると、もっと別の言い方があった気がするのに、すでに遅い。僕もよくその沼にはまります。 森見登美彦の『新釈 走れメロス』を読むと、そのモヤモヤに少し風が通る感覚があります。読者の方が保存していた言葉を見ていると、「嘯く」「満腔」「塵芥」「黒山の」「そぼ降る」みたいな、情景や心の動きを濃く切り取る語彙に反応しているように思いました。森見作品の特徴でもある、ちょっと大げさで、でも妙に人間くさい語り口が、気持ちの形を取り戻す手がかりになるんです。普段なら使わない言葉を眺めているだけでも、自分の中にある感情の“鋳型”が少し広がるような感じがします。 それに、この本は単なる言葉遊びではなく、誰かの傲慢さに傷ついたり、億劫さに飲まれたり、逃散したくなる日があったりと、人間の弱さをそのまま描いています。読んでいると、「強くあらねば」というプレッシャーよりも、「まあ人間だし、こんな日もあるよな」という現実的な視点に引き戻される。物語の中で登場人物がだしぬけに動いたり、実地で右往左往したりする姿を見ると、自分の人生のゆらぎも少し許せるようになるんですよね。 物語を通して、感情に名前をつけ直したい人に刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの22%が集中しています。
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