
空白を満たしなさい(下) (講談社文庫)
平野啓一郎
講談社 / 2015-11-13
この本について
なんとなく自分が何に疲れているのか分からないまま日が過ぎていく時ってありますよね。仕事では平気な顔をしていても、家でのしんどさが残っていて、気づけば全部がしんどくなる。あるいは、ふと「今の自分は本当に自分なのか」と立ち止まりたくなる瞬間がある。そんな時、この小説の言葉がゆっくり効いてきます。 この本は「死んだはずの自分」が生き返るという設定なんですが、読み進めるうちに、テーマはむしろ“生きている時の自分の扱い方”なんだと気づきます。たとえば、分人ごとに疲れるのに、体のコップはひとつしかないという話。これは、会社用の自分や家族用の自分を切り替えるのがうまくても、結局ひとつの身体に負荷が溜まっていく現実を、妙に正確に言い当てています。また、嫌な自分が出てきた時に「消そうとしないで、別の自分で見守ればいい」という視点は、無理に前向きになるよりずっと地に足のついた救い方だと思いました。 さらに、誰かの死や弱さを「責めない」という姿勢も印象に残ります。人間の苦悩を軽く扱わない視線があって、だからこそ、自分の中の複雑さをそのまま持ち込んでいい場所のように感じました。 今の自分にどこかしっくりこない人、あるいは“いくつもの自分”に振り回されている気がする人には、静かに刺さると思います。読後に急に人生が変わるような派手さはないけれど、しばらく心の底で息をし続ける言葉が拾える一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの45%が集中しています。
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