
折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
ケン リュウ and 中原 尚哉・他
早川書房 / 2018-02-25
この本について
最近、「世界の変化が速すぎて、何を基準に考えればいいのかよく分からない」という話をよく聞きます。自分の立っている場所が揺れている感じというか、異国のニュースを見ても、背景がつかめずにモヤモヤが残るというか。僕自身も同じで、理解の届かない領域に向き合うたびに、自分がいかに表面的な情報だけで判断していたかを思い知らされます。 『折りたたみ北京』が面白いのは、中国SFの“物語”を通して、その複雑さに触れられるところです。政治や技術の話が出てくるのに、解説書のように断言しない。むしろ「外側の視線で単純化する危うさ」をそのまま物語に埋め込んでくる。読んでいるうちに、自分の想像の範囲がいかに狭かったかに気づかされます。たとえば「技術は中立だ」というセリフがあるけれど、その結果として誰が自由になり、誰が不自由になるのかは、場所によって全然違う。こういう“ずれ”に気づけるのが、この本の強さだと思います。 もう一つ印象に残ったのは、人と人が語り合うことで互いの内部が少し混ざり合う、という描写。これは中国の話というより、僕たちの日常にそのまま持ち込める感覚で、理解できない相手や社会に向き合うときの姿勢を少しだけ変えてくれます。 「世界の複雑さに置いていかれている気がする人」に静かに効く本です。読後に“分かった”とはならないけれど、“分からないままでも考え続けられる”ようになる、そんな一冊でした。
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