
52ヘルツのクジラたち
町田そのこ
この本について
「誰にも届かない感じがして、言葉を飲み込むことが増えたな」と思う日ってありませんか。誰かに憐れまれるのが怖くて黙ってしまったり、昔の傷がまだ心のどこかで疼いていたり。大丈夫だと思って生きていても、ふとした瞬間に自分の声がどこにも届いていない気がして、胸がざわつくことがあります。 『52ヘルツのクジラたち』は、そういう“届かなさ”を抱えたまま大人になった人間が、他者との関わりの中で少しずつ呼吸を取り戻していく物語です。読者が保存していた抜粋を見ていると、親からの愛を求め続けた痛みや、大人を警戒してしまう感覚、自分の瓶には何も入っていなかったと思ってしまう虚無……そういう部分に強く反応しているのが伝わってきます。この本の効き方は派手ではなくて、むしろ静かです。でも、静かなまま深く刺さる。 たとえば、自分の中で押しとどめてきた思いを「全部聞いてる」と受け止めてくれる存在に出会う場面は、他者と関わる怖さを抱えたままでも、一歩だけ前に進めるかもしれないという視点をくれます。また、善意と依存の線引きについて繰り返し描かれるのも印象的で、「助けたい」「救われたい」の境界が曖昧になる瞬間を丁寧に扱ってくれるので、過去の人間関係をそっと見つめ直すきっかけにもなる。さらに、孤独の匂いを持つ者同士が出会ったときの、言葉のいらない理解のようなものが描かれていて、自分の弱さを責め続けてきた人には特に沁みると思います。 孤独を抱えたまま、誰にも迷惑をかけないように生きてきた人に刺さる本です。読後、すぐに何かが変わるわけではないけれど、自分の声は本当に届かなかったのか、それともただ届く場所を知らなかっただけなのか。そんなことを静かに考えさせてくれます。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第8章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの13%が集中しています。
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