
流浪の月 (創元文芸文庫)
凪良 ゆう
東京創元社 / 2019-08-30
この本について
最近、「自分の気持ちに名前がつかなくて困る」みたいな瞬間がやたら増えた気がします。寂しいのか疲れてるのか、誰かに許されたいだけなのか、自分でも判定できないまま日々を回してしまう。そんなときに『流浪の月』を読むと、言葉にできなかった重さが静かに形をもちはじめます。 この物語の効き方は派手じゃないけれど、確実にじわっと来ます。まず、痛みが「ない日とある日を行き来するもの」として描かれているところ。これに救われる人は多いはずです。乗り越えたかどうかではなく、波のように寄せてくる感情とどう折り合いをつけて生きていくかが、丁寧に書かれているからだと思います。 もうひとつは、人との関係に名前をつけられない不安と、それでも一緒にいたいと思ってしまう矛盾。恋愛とも家族とも違う結びつきに迷うあの感じに、この本は変に答えを押しつけてこない。ただ、そういう関係も存在していいんだと自然に思わせてくれます。 さらに、誰にも見せてこなかった弱さや癖が、ある人の前ではそのまま流れ込んでしまうあの感覚。逃げ場なのか依存なのか判定がつかないまま、それでも心がほどけていく場面に、自分の過去を思い出す人もいるかもしれません。 人との距離感に疲れている人、関係性に名前を求められることに息苦しさを感じている人には特に刺さる作品だと思います。読んでいて痛いところもあるけれど、不思議と「まだ大丈夫かもしれない」と思える一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの25%が集中しています。
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