
デッドライン(新潮文庫)
千葉雅也
新潮社 / 2019-11-27
累計読者数6
平均ハイライト数 11.8件/人
推定読了時間 約2時間5分
star総合評価 60/100
trending_up後半加速型
check_circle推定完走率 60%
この本について
仕事のことでも、人間関係でも、「自分って何者なんだろう」と急に足が止まる瞬間があると思います。役割とか属性で説明しきれない気持ちがあるのに、うまく言葉にできないまま日常だけが進んでいく。そんなモヤモヤを抱えたままでも生きていけるけれど、ふと空白が痛むようなあの感覚に、僕はずっと居心地の悪さがありました。 千葉雅也さんの『デッドライン』は、その空白に無理やり答えを当てはめるのではなく、「揺れたままの自分」をそのまま生きていいのだと示してくれる本です。思想と欲望、日常と哲学、過去の自分と今の自分が、切り分けられずにひとつの線上に並んでいく。その過程で、構造主義やポスト構造主義といった理論が、抽象ではなく“自分の感じ方を説明する道具”として急に手元に降りてくる瞬間があります。河川敷や二丁目の情景の描写は、ただの風景じゃなく、自分の中の揺れを外側に映し出したようで、読んでいて妙に腑に落ちました。 一番大きかったのは、「マジョリティの道徳のなかで無意識に縮こまっていた感覚」に気づけたことです。誰かの基準に合わせようとする癖がある人ほど、この本の視点の変化が静かに効いてくるはずです。「自分をどう定義するべきか」という問いそのものを少し横に置いてみたい人に、ひっそり刺さる一冊だと思います。
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出版社による紹介
珊瑚礁のまわりで群れをなす魚のように、導きあう男たちが夜の底をクルーズする――。ゲイであること、思考すること、生きること。修士論文のデッドラインが迫るなか、動物になることと女性になることの線上で悩み、哲学と格闘しつつ日々を送る「僕」。気鋭の哲学者による魂を揺さぶるデビュー小説。
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