
そして誰もゆとらなくなった (文春e-book)
朝井 リョウ
文藝春秋 / 2025-07-08
この本について
人と関わるとき、相手の表情を読んでばかりで、自分の行動がいちいち恥ずかしくなる瞬間ってありませんか。あの場面での発言、あのときの空気、気にしなくてもいいと頭ではわかっているのに、体の奥でぐるぐる回り続ける感じ。私もよくあります。忘れたいのに、妙に鮮明に残るんですよね。 朝井リョウさんの「そして誰もゆとらなくなった」は、その“ぐるぐる”の正体を、笑えるくらい率直に書き出してくれる本でした。自分の中のどうしようもない独りよがりや、他人からどう見られているかへの過敏さを、ここまで具体的に描かれると、「あ、これ私だけじゃないんだ」と肩の力が抜けていきます。たとえば、自分で選んだことを直視するのが妙に恥ずかしい気持ちとか、他人に向けていた視線が巡り巡って自分に刺さってくる感じとか、誰にも説明したことないのに心当たりがある人は多いはずです。 もう一つ、この本が面白いのは、恥ずかしさや後悔のエピソードが、作者の逃げ腰も含めて“そのまま”書かれているところです。きれいにまとめようとしないから、読んでいるこちらも無理に前向きにならなくていい。むしろ、ああいう情けなさの中にしか出てこない視点があるんだと気づかされます。自分とは違う価値観を持つ人と出会ったとき、相手のほうに“概念がないだけ”という発見も、妙に腑に落ちるんですよね。 人付き合いに疲れやすい人や、自意識が暴走してしまう自分をちょっと笑いたい人には、特に刺さると思います。読んだあと、失敗の記憶に対してほんの少しだけ優しくなれます。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの25%が集中しています。
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