
シャドウ (創元推理文庫)
道尾 秀介
東京創元社 / 2009-08
この本について
人と向き合うとき、「相手の本音がどこにあるのか」や「自分の見ているものは正しいのか」という不安って、けっこうついて回りますよね。家族でも友人でも、近い存在ほど距離感がわからなくなる瞬間があるし、相手の言葉の裏を読みすぎて、逆に自分の感情が迷子になることもあります。僕もそういうとき、何を信じればいいのかぐらぐらします。 道尾秀介の『シャドウ』は、そんな揺らぎをフィクションの形でぐっと押し広げてくれる物語でした。誰かが「偽物に見えてしまう」ことや、大切な人の死が言葉の意味を変えてしまうこと、自分の中の影を他人に投影してしまうこと。物語としてはミステリですが、読みながら「人って簡単に正しさを見失うんだな」と実感させられる描写が続きます。特に、守られる立場だった子どもが、いつのまにか他人の痛みを理解しはじめてしまう瞬間の描き方がすごく静かで、それなのに刺さるんです。 この本のいいところは、派手な真相よりも、人の心の“どこがほころびやすいのか”を丁寧に描いているところだと思います。誰かの弱さを断罪しないし、間違った選択をした人物にも、それを選ぶしかなかった背景がちゃんとある。読んでいると、他人と自分を切り離して見ないで済むような、そんな視点が少しだけ育つ感じがあります。 「身近な人との距離感にいつも悩んでしまう人」に、とても静かに効く一冊です。フィクションなのに、読み終えたあと現実の会話が少し変わりました。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの20%が集中しています。
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