
カラスの親指 by rule of CROW’s thumb (講談社文庫)
道尾秀介
講談社 / 2011-07-15
この本について
仕事でも人間関係でも、「正しいことをしたはずなのに報われない」「善意が裏目に出て、むしろ自分を追い詰めてしまう」みたいな経験ってありますよね。僕も、過去の選択を思い出しては後悔の尻尾を踏んでしまうことがあります。そんなときに思い返したのが『カラスの親指』でした。きれいごとじゃなく、人がつまずく現実と、その先にどう立ち上がるかを描いているからです。 この物語の芯には、武沢やテツさんのように、罪や失敗を背負いながらも「次の一歩」を探す人たちがいます。彼らは立派じゃないし、むしろ後ろめたい過去ばかり。それでも、誰かに手を貸したり、誰かに支えてもらったりしながら、ほんの少しだけ前に進んでいく。その場面に触れると、自分の後悔や弱さも「それでも生きていく材料になるのかもしれない」と思えてくるんです。教訓がそのまま役に立つわけじゃない。でも、気づかないうちに自分の判断を支えてくれている。そんな実感がこの本にはあります。 そしてもう一つ、この物語は「人は一人じゃ生きられない」という言葉を、説教じゃなく“具体的な仕草”として描いてくれます。親指がほかの指に寄り添わせるあのシーンは、どれだけ不器用な関係でも、誰かの力を借りて初めて届く場所があるんだと静かに腑に落ちました。誰かを恨んだり、自分を責め続けたりして動けなくなる時期を知っている人ほど、この感覚は刺さるはずです。 過去を抱えたまま、それでも前に進みたい人に。今の自分をごまかさずに読める一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの27%が集中しています。
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