
昔話の深層 ユング心理学とグリム童話 (講談社+α文庫)
河合隼雄
講談社 / 1994-02-18
この本について
人と距離を取るのが下手だったり、気づけば何かを抱え込みすぎていたり、相手のためのつもりがいつのまにか自分の首をしめていたり。そんな経験、僕もよくあります。頭では「手放したほうがいい」とわかっていても、心の底でうごめくものの正体がつかめないまま動けなくなる。河合隼雄の『昔話の深層』は、この“うごめく正体”に静かに光を当ててくれる本でした。 昔話に出てくる母なるものや継母、火や森といったイメージが、単なる物語のパーツではなく、僕たち自身の無意識にある元型の表れとして読み解かれていく。たとえば「相手を守るつもりが、いつの間にか自立をさまたげてしまう」という指摘はドキッとしましたし、「知識が増えすぎて、体験そのものを感じられなくなる」という話は、スマホに支配されがちな日常にもそのまま重なるところがありました。さらに、昔話の主人公が地下や森へ降りていく構図が、僕らが不安の底へ降りていくときの心の動きと重なるのもおもしろいところです。 この本が特別なのは、昔話の解説にとどまらず、読者の内側で静かに起きていることを言語化してくれる点だと思います。何かを抱えて手放せない自分や、誰かの影響から抜けきれない自分に気づきたい人には、とても相性がいいはずです。こんな人に刺さるのは、理屈よりも「自分の奥にある得体のしれない感覚」を確かめたい人だと思います。 物語を通して自分の深層にゆっくり降りていく体験をしたいときに、そっと開きたくなる一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの38%が集中しています。
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