
ためらいの倫理学 戦争・性・物語 (角川文庫)
内田 樹
KADOKAWA
この本について
ときどき、知らないことについて「分からない」と言いにくい場面がありませんか。仕事でもニュースでも、立場をはっきり示すことが“ちゃんとしている”ように扱われて、迷っているだけで知性が足りないみたいな空気になる。けれど本当は、その迷いこそが自分の感覚を守ってくれている気もします。 『ためらいの倫理学』を読んでいて強く感じたのは、「判断を急がないこと」にちゃんと理由がある、という視点でした。自分の知識を疑うことや、分からないまま立ち止まることを、弱さではなく思考のスタイルとして扱ってくれる。戦争や政治のような大きいテーマを扱っている本ですが、そこで語られる“ためらい”が、日常の小さな選択にもつながってくるのが面白いところです。特に、誰かの語った出来事をすぐ“真相”で評価しようとする反射的な態度や、正しさを盾に他人を裁こうとする空気が、自分の中にも確かにあるなと気づかされました。 もう一つ刺さったのは、「きっぱりした態度のほうが立派」という思い込みをほぐしてくれるところです。歴史の問題も、国と個人の距離感も、白黒つけられないままに揺れている現実を、そのまま扱う姿勢が貫かれている。だから読んだあとに、自分のモヤモヤを急いで片付けなくてもいいと思えるようになります。 迷いながら考えることに罪悪感がある人、あるいは“分からなさ”とどう付き合えばいいか悩んでいる人に、とても静かに効く本だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第3章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの28%が集中しています。
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